秋はまだ訪れていない/山人
朝の大雨は不気味に思えるほどだった。釣り客は四時に弁当持参で釣りに行くというので夜明け前から準備したが、この土砂降りで一旦引き返してきたようだ。あれだけ続いた日照りの日々は結局相殺されるのである。
午後二時、昨日に比べるとはるかに時間的余裕がある。本来、もっと手の込んだメニューだったが大幅に変更した。手の込んだものを提供したとしても相手に伝わるとは限らない。だとすれば、オーソドックスなモノを出した方が良い。といった具合に何事も根が続かず、手っ取り早い方向へ舵をとることが多くなった。
雨は上がり、再び気温は高くなってきたが暑いと感じることはない。ただ、セミがうるさい。セミ。何かを食べているの
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