憂愁の中で私は/積 緋露雪00
のだ。
自同律の不快とそれを名付けた先人がゐたが、
その時その先人は自らの腐臭を嗅いでゐたかもしれなかったのだ。
この腐臭は、しかし、私が存在したその根拠であり、
腐臭が立ち籠めてゐる限り、私は死体とはいへ、
私は必ず存在してゐた事は間違ひなく、
それのみが私の安寧の根源なのだ。
哀しい哉、ゆっくりと時間は流れゆく中で私は、
ゆっくりと腐乱してゆく内部の私に鼻を抓みながらも
私は何とか此の世に存在するのだ。
「死体に口なし」とはいへ、
気付けば既に腐乱死体となってゐた内部の私は
腐臭と言ふ形でその存在を指し示す事でしか存在出来なかった私は、
哀しいのか、ただ、
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