メモ(ノートに書いた詩)/由比良 倖
 
で空は満ちている。

毎日僕は雲を感じる。
十年という時は短すぎて、
僕は絵の中の花のように凍り付いてしまう。

僕は君を待っていた。
君に会った瞬間、君は消えてしまった。
造花みたい。水のない世界で。

さて、僕はツバメノートを持って、
風に揉まれて老いていこう。
(言葉は終わらない雨のように流れていく。)
宇宙のように。全ては一粒の雨。

(セミが鳴いている。泣いている!)
(午後六時の市内放送が流れ)

僕は何を書いたのか。
言葉は今も、宇宙の中を流れている。
(そしてここは夏の水。多分、そのことだけを書いたんだ。)
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