夏の扉の香り/秋葉竹
 
惰な世界が
私の心を捉えて離さないだろう
夜への希望は淋しいくらい孤独だけれども

夏の扉の香りだけが
ぎっしりと詰まった海岸へゆこうよ
鶴に似た流木をたったひとつみつけたよ


『乾いた渚、わからない無限
宇宙と薔薇の甘い接吻を
誰もみたことがないからすこし淋しいのです』


波に持ってゆかれた純情は
ゼロの調べをゆらゆらと奏でて
夜を迎え入れるかのように夕陽が沈む

沈む懐かしさに
静かな、それでいてすこし痛い想いで
生きる意味なんて問いかけたりして

ささやくようになにもかも
やめたくなるトモシビの儚さ
灯すは、祭りのあとの静かな異界の獣か







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