ヒヤシンス/リリー
 
 
 広くつづいた枯野の道は
 骨ばかり
 高く乾いた冬空に
 黄昏月の悲しげな瞼の赤らみ

 涙の匂いがしないように
 化粧水をたっぷりふりかけて
 いかなる慰めも求めていない
 眉間にふかく埋め込まれた
 ひとりみの侘しさ

 時がたつと
 重い石ころを握りしめた
 よるべない童女のような存在が
 まだ白雪の積もる日もある
 花壇のそばでうずくまり

 やがて剥がれてくる
 くろい空
 じっと耳を澄ませば
 遠い春雷の音ない響きか
 花壇ではヒヤシンスの空間に
 甘く柔らかい
 青葉の様な香りが、漂っている

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