pumping capacity/ホロウ・シカエルボク
 

結晶化した記憶たちが鱗粉のように降る、読みかけの本は栞を挟んでテーブルの上にある、それを感じた瞬間、それまでなにをしていたのか、直前までの思考や状況のすべてが途切れた、飲み干したペットボトルは蓋をされて床に転がっている、現実は視覚以外の情報を遮断され、自分がAIで作った動画の中に居るような気分になる、ああ、出来過ぎたまでの日常、降り積もる記憶だけが感触を維持している、それはまるで細く短い針のように、怪我にもならないけれど言いようの無い不快感を撒き散らす、俺は静かに時が過ぎるのを待っている、解く術の無い紐を解くために指先を痛める趣味はない、ゆっくりと感覚が戻ってくる、身体は汗をかき始めている、エ
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