祈鳴/あらい
ら
弓のようにぬらぬら つるされては
波だつ耳を塞いだ烏が裏地を掻い潜る
"みちづれ"を押し流してゆくしかなかった
――そこは胎動
すくいあげる手順は、いまだ
一度も息をしたことがないことに
そうか。産声よりもあさいチケットは
ほのくれないに閉じたつばさに
わずらいてから孕みおとす
黒曜の舌を撫で
火傷すら忘れて
真昼に死んだ雨のピクセル
うろたえながら、こぼし、
乾かし 拾いあげ、
ひとり、
ひとつ、
ひとかたまりの檻を超えた。
うみねこ。鼻梁がツンとうずき
まなざしは一閃、こだましている
肺のうらで くくっといたんだ
煤色の朝をかじり、
やみくもに。
やみくもに。
やみくもに。
踏み抜きながら、
ふきあがる蔦の
(しろがねの、翠の
「わたしは見なかった!」
しらない!
(声のない、
匙をまきちらす
『蒼い』
くちを縫われ、
わたしは還ってきた
わらうでもなく。
いのるでもなく。
ぬぐわれるようにいきわたり、
ふいにたつように
根を下す。
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