枯れ木と泥/成澤 和樹
老人を見ると枯れ木を思い出す
無駄なものは一切取り払われ、水を通すだけの老木だ
水を通す、それだけしか出来ない全く透明な存在だ
錯覚に過ぎないが
若者にはそう見える
若者を見ると泥の匂いを思い出す
あれやこれやと興味を持ち、何一つ卓越しない飛び散る泥だ
自らを汚し、周りの人間をも汚してゆく、濁った存在だ
錯覚に過ぎないが
老人にはそう見える
老人とは、若者とは、かくあるべき
そうでありたい
若者は老人の擦り切れたボロを、角の取れた丸い石を
憧れのまなざしで見る
老人は若者の白い新しい衣服を、鋭い角を持つ石を
温かいまなざしで見る
老人は若くあれ できるだけ頑固に
若者は見境をつけよ できるだけ思慮深く
私は、泥のついた枯れ木になりたい
私は、角の取れた鋭い石になりたい
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