華乱孤論/ただのみきや
去り際の気化
ひとむらの瑠璃よ
得るも飢え
酒に濁って
凝視する
麝香 目の中の目
水走り
つむぐ 罪の
雨 糸断って
返すつばめ
その血の傾斜
あらかた生を溶かし終え
通り魔みたいにまた朝が
一張羅の影に
つぎつぎと星を穿つ
この心臓を孵すのは
きみの掌
恥じらいの園
金のマゾヒスト
銀のマゾヒスト
多神教による淫行祈願
一神教による戦争志願
群れる蜂 蜜の雨
禁忌に歓喜
痺れるくびれ
野蛭のように貪って
海月みたいに弄って
きみの鬼門は
とうりゃんせ
カチューシャつけてかご仕立て
けちんぼ立ちんぼ通せんぼ
いま赤茶けた封筒の中
インクの青さがことばを犯す
キジバトは鳴いているか
幽霊の膝枕で聞くように
蝶は燃えているか
芍薬に触れあの庭で
(2025年6月29日)
戻る 編 削 Point(5)