箸置き/そらの珊瑚
 
ずにいる

箸置きにしてみようとおもったのは
ほんの思いつきだった
金魚を飼っていたら水槽に入れてみたかもしれない

この箸置きを置いたのは
ほんの気休めだった
あれからずっと砂時計の砂は落ち続けている
新しいシュシュを猫に取られないうちに
髪の毛をくくる
晴れ間に洗濯機が回っている
紫陽花という名の舟が水道水に泳いでいる
遠い国の仄暗くよどんだ運河を想う
トーガを着た人々がかつて歩いた石畳

溶けきれないおもいでを添える
夏がやってくる前の
ほんの気休めに
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