蚯蚓/田中宏輔
 
くは吊革につかまって立っていた。電車の揺れに、ぼくのあそこんところが反応して、むくむくむくっと膨らんできた。前の座席に坐ってる上品そうなおばさんが、小指を立てた右手でメガネをすり上げて、ぼくのあそこんところを見つめた。とっさにぼくは、カバンで前を隠した。そしたら、よけいに、ぼくの蚯蚓は、カバンにあたって、ぐにぐにぐにぐにあたって、あっ、あっ、あはっ、後ろにまわって、あっ、あれっ、そんな、だめだったら、あっ、あれっ、あっ、あつっ、つつっ、いてっ、ててっ、あっ、でも、あれっ、あっ……


戻る   Point(14)