寂静/本田憲嵩
 
初夏はまだ始まったばかりだというのに、早生まれのトンボがもう死んでいる、アスファルトの上にその細い細い機体を傾けて、まだ生きていたかった、みたいに、そのうすいガラスのような透明な羽を、そよ風にかすかに震わせながら夏の陽にうす暗く煌いている、


――あかるい夏空には、いくつかの白い入道雲に混じって、ひとすじの飛行機雲がたしかな軌跡、を描いている、


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