秘密録音/栗栖真理亜
 
いつの間にか会話は盗み撮りされて
裁判と云う公の場に曝される
弱い立場を守ると云う建前で

発言は人工的に歪められ
恐れは怯えに変わり
人間不審に陥らせる

職場の雰囲気は凍てつき
職員は盗聴器をデスクに翳して
何気ない会話すら喪う
誰の了解も得ずに録音された会話だけが
あからさまな場で虚しく響き渡り
誰も何も得しない社会だけが続く

不信と腐心とが拮抗する暴露合戦が延々と
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