通行人/
リリー
青草の生えた細長く冷い光の落ちてくる場所を
再びめぐりあうことのない通行人は
走りぬけていった
あたりが急にどんよりとして
ふいに 植え込みからこちらを向いて居る
大輪のアジサイに気づく
水縹のサマーカーディガンを羽織って
なにか不安げに誰かを待っている若い女の様
その視線とすれちがう
私のブーツは、さっき水たまりを踏んだ時と違って
路面ではねて砕ける時間の粒子に
そっと
靴底を鳴らしていくだけだ
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