タイム・スケール/成澤 和樹
もう、グレイ・スケールでしか描けなくなった
風景画の片隅を独り歩く
過ぎ去った足跡をなぞってゆくには、余りにも歩幅が遠く
駆けてゆく力も限りなくなく
ただ一滴、淡い水色を足元においた
波紋は広がる
もう、ブルー・スケールでしか描けなくなった
創られた記憶の片隅では
灰色の海と変わらない無地の世界で、哀しみだけが募ってゆく
立ち上がる力も限りなくなく
どんなスケールでも表せない
あの風景とだけ覚えている記憶の中で
足跡を、時の白波がさらってくれるよう
ただ一度、深い溜息を蜃気楼のようについた
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