幻/若森
あの日降る雨は僕の鼓膜にフィットした
乱雑で簡素な終わらない街並みに
遠く自転車走らせた
遠く意識をスクロール
体の中心部に紫陽花をしまう
まるで狂った視界
冷たくて温かいアスファルトは
僕の脚を侵食中
僕の言葉は湿っている
僕の言葉は動けない
伝えたいことは液体になって
下水道へ流れてしまった
君も流れてしまった
重い雲の向こう側
不甲斐ない僕の指先
いつか晴れたら
僕が君に伝えるから
いつか晴れたら
言葉をキャッチしてくれ
君がちゃんと
キャッチしてくれ
戻る 編 削 Point(4)