今朝の素描/ひだかたけし
薄暗い森林の山道、
根っこの浮き出た
凸凹の急斜面を
ひたすらに登りいく
人、人 また、人
登山服姿の後ろ背の
視える夜陰の寝床で
ひとり横たわり
耐える病魔は誰のもの
森林を縫ってひたすらに登りいく
意志の限界に投擲され新た意志し
耐えて今朝に起き
ベランダに出れば
てらり濡れる
眼下街道沿い
アスファルトの
今に無機質を剥き
降り注ぐ雨の最中
照り輝く紫の色彩
見事なキキョウの花、
濡れそぼりつ咲き開き
毎朝ずっと水遣り
陽に当て育てつつ
何時からか幾つもの
イノチの頂きに昇り詰め
ひとつ、ふたつ、みっつ
風が吹き付ける
風を感じる
風に包み込まれ
見送る風の
透きとほり 、
人、皆それぞれに
この地上の彷徨者と。
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