妻と毒/イオン
この生命保険は
六十歳になったら保障額が
六千万円が六百万円に変わる
判っていたがその通知が届いて
自分の価値が下がったことを実感
定年を迎えての再雇用では
給与が半減すると判っていたが
実際に振り込まれた額に妻は
生活できないかもとうなだれた
生命保険の月額を
見直さないとやっていけないと
身の丈に合った保険に切り替える
契約書の受取り欄の続柄で
妻を毒と書いてしまった
妻の目の前で
字が似ているからと言っても
妻は目を見開いたまま
少しの毒は薬にもなる
おかげで保険を使わなかった
助かった
薬と楽の字も似ている
もう楽できると思ってたのに
妻は言うと首を傾げた
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