ちいかわ/無名猫
のを思い出した。
「グミ好きなの?」って聞いたら、微妙な笑顔で返してきたけど、あれって中のシール目当てだったのか。
やっぱり別れて正解だった。
私は仕事して、疲れて、メイク落として、また次の日を乗り越えている。
やつは、風の声を聞いて、それを作品にしてる。
なんか、ますますむかついてきた。風に謝ってほしい。
それでも今日、なんとなく本屋でその詩集を買ってしまって、
夜、部屋でそっと開いて、声に出して読んでみた。
やっぱり痛い。
痛いけど、
ちょっとだけ、やつのあの頃の沈黙が、言葉になった気がして、
少しだけ、胸の奥があたたかくなった。
そういえば、ちいかわは喋らない。
やつも喋らなかった。
それなのに、
今になって、心の奥をこんなふうに語るなんて。
なんだか、ずるい。
ちゃんと詩人になってて、ずるい。
ページを閉じたあと、部屋が少し広く感じた。
その静けさに、ふと胸がほどけて、気づいたら涙が頬を伝っていた。
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