自称詩人はヒエを食え/花形新次
 
コメが高いなら
コメを食わなければ良い
アワでもヒエでも
食えるもんなら何でも
文句言わずに食え
どうせ碌でもない
働きしかしねえんだからさ
自称詩人に食わせるコメなんて
端からないだよ
お前らに食わせるぐらいなら
ガザ地区に送るんだよ、ドアホ!

6月のベランダから見える景色は
雨に濡れて
駅に向かう少女の赤い傘が
揺れている
きみが大人になったときに
今の一瞬を思い出すことはないだろう
だけどきみの気付かないところで
こうしてきみを見ている人間がいるってことは
どうか知っておいて欲しい

部屋がしんと静まりかえるなかで
時計の針の音だけが気に障る
いつになったら
この時間に追い立てられる生活から
抜け出せるのだろうか

ベランダに出て
自称詩人用のヒエを撒く
雨だから鳥も来やしないだろう

自称詩人だけが雨空を旋回して
ヒエを狙っている

そう、自称詩人だけが狙っている







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