くまモン/無名猫
 

もう、土の匂いがしない
かわりに残ったのは
「かわいい」や「需要」のこだま

イオンモールの開店イベント
きれいに整った人工芝
子どもたちはみな純粋で
たくらみのない笑顔に救われる
だけど 裏で積み重なるのは
「売上」と「好感度」

ニュースは続く
「市街地出没」「緊急避難命令」
世界はおそれおののく
でも、ぼくも熊なんです

みんなが寝静まった夜
すべてを脱いで ベッドに入る
ホテルの天井を見ながら
少しだけ、思い出す

山の鼓動
雨の気配
静謐な野生のリズム

そして、祈る
ぼくの「中の人」が
まだ、どこかで眠っていることを

都市はまばゆく
ときに 自らの輪郭さえ失い
熊は山から
密やかに降りてくる

そして
だれでもないぼくは
「消費」の向こうの「愛」に
そっと手を伸ばしてみる

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