TWIN TALES。/田中宏輔
まれて置かれてあった。
(リルケ『オーギュスト・ロダン』第一部、生野幸吉訳)
ブチブチ、ブチブチ、踏んづけてる、これ、何の音って訊くと、ショウヘイがカエルだよって教えてくれた。大粒の雨が激しくフロントガラスに打ちつけている。ぼくが電話をかけたときには、十一時を過ぎていた。恋人にふられたんだって言うと、彼は車を出して、ぼくのいたところまで迎えに来てくれた。彼は黙ったまま、琵琶湖まで車を走らせた。真夜中のドライブ。ブチブチとつぶれるカエルの音に耳を澄ましながら、昔付き合ってた恋人の横顔を眺めていると、ふと、映画のようだと思った。
さわってごらん、ずぶぬれだ──
(カフカ『審判』第六章、原田義人訳)
波に運ばれて
(ジイド『贋金つかい』第一部・二、川口 篤訳)
ふたたび生まれ変ったのだ。
(ジイド『地の糧』第一の書・二、岡部正孝訳)
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