TWIN TALES。/田中宏輔
れた。試合を見てるときなんか、だれにもわからないように、お尻をさわられたりしてたから、先輩も、ぜったいに、ぼくのことが好きだと思ってた。寝る前に、先輩がトイレに立ったとき、ベッドの横にごろんとなって、腕を伸ばした。すると、指の先に触れるものがあった。SM雑誌だった。グラビアだけ見て、元の場所に置いて先輩を待った。先輩が戻ってきたとき、ぼくは目をつむって眠ったふりをしていた。
ひかりと波のしぶきのために、
(カミュ『異邦人』第一部、窪田啓作訳)
目をさました。
(モーリヤック『蝮のからみあい』第一部・一0、鈴木建郎訳)
眼がさ
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