TWIN TALES。/田中宏輔
『ジイドの日記』を読んでいて、ぼくがもっとも驚かされたのは、友人であるフランシス・ジャムについて、ジイドがかなり批判的に述べていることだった。ジャムがいかに不親切で思い上がった人間か、ジイドは幾度にも渡って書き記している。詩人としての才能は認めていたが、公平な批評能力もなく、他人に対する思いやりにも欠けていると考えていた。もしも、田中冬二が、『ジイドの日記』を読んでいたら、ぼくたちが「フランシス・ジャム氏に」という詩を目にすることはなかっただろう。
何か落としたぞ、ほら、きみのだ。
(ナボコフ『ベンドシニスター』1、加藤光也訳)
たしかに、
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