ふなっしー/無名猫
 
にんげんじゃないと
はじめから言っていたのに
その声のトーンは
どこか戦っていた

背中のチャックは
都市のざわめきにまぎれながら
幾度となく
重力を裏切った

宙に浮かぶ輪郭は
いつも叫びのかたちをしている

跳躍の途中で
世界が止まればいいのにと
いつも思っている

まぶしすぎる黄色は
孤独の反射率
うるさすぎる語尾は
沈黙に負けないための祈り

なぜ梨かと訊かれても
ただしくは答えられない
「ふなばし」って、そういう地名だからとか
「なんか跳ねてておもしろい」とか

でも本当は 世界の端っこで
誰にもなれない
誰かだった

やわらかいものだけが
やさしいとは限らない
つぶれそうな笑顔で
世界の硬さを受け止める日もある

そして今日も
ふなっしーは跳ねる
高く、高く
堕ちないように
裏切るように

梨のくせに
ひとの痛みを知ってるふりして

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