ストロベリームーン/花野誉
四角い窓から月が見えた時
この頃だったなと思い出す
琵琶湖の西
鯖街道を通り
原生林を間近に感じるログハウス
まだ肌が艷やかで
自分が美しいと思い込んでいた頃
月明かりの明るさに目覚め
毛布を抱えて三角座り
丸太が切り取られた四角い天窓
そこから覗く月を飽かずに見ていた
裸の背中が寒いと気づく頃
隣で声がする
温かい寝床に招き入れられ
背中をさすられる
誰もいない森閑の夜
月光が何かを伝えてくるようで
胸がざわついたけれど
あの頃の私は
前向きなお馬鹿さんで
かぶりを振って
その人の胸に頬を擦りつけた
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