ペイズリー/片野晃司
グモール全体が手のひらの上に平たくおさまってしまい、小さくなったそれを地図として見下ろしながらショッピングモールの入り組んだ遊歩道を歩いていって。ぐるぐると迷い、流れ、ぶつかり、すっかり疲れて帰途に就けば、自動ドアを開くたび遊歩道も両側に並ぶ店も植え込みの椰子もどんどん小さくなっていって、しまいにはショッピングモール全体が手のひらの上に平たくおさまってしまい。
結局のところ、無限に大きなショッピングモールは無限に小さなショッピングモールでできており、無限に大きなペイズリーは無限に小さなペイズリーでできており、無限に長い物語が無限に小さな物語でできているように、歴史が歴史でできているように、宇宙が宇宙でできているように。結局のところ、どこまでいってもわたしたちはわたしたちでできているのだし、こうして流れ、うずまき、ぶつかりながらまじりあい、あわだつ分子のひとつひとつなのだし。
2024年9月 詩誌「hotel第二章」
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