荊という名の愛を/栗栖真理亜
この胸の痛みに耐えなくては
いま
人を愛することの難しさを知ったような気がする
生まれ育った環境で嘘や裏切りに遭い
肉親ですら憎み
信じることすらできなくなった彼を
どうして助けることができようか
悲しみから救うには愛しかないのに
あまりにも彼の深い溝に
入り込むことさえ躊躇する臆病者の私
それでも荊を踏んでも彼のもとへ歩んでいきたい
誰がなんと言おうと彼のそばで少しでも
人の優しさや温かさを感じてほしい
祖父母や母たちが教えてくれた
家庭という木漏れ日を彼に知ってほしいから
ちょっとずつでいい
彼を信じて愛し続けよう
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