密室〈trente-quatre 34, trente-cinq 35〉/
藤原 実
を
と少女は言うと 遠い空の下の暗い影が広がっているあたりに
身を投げました
希望! 希望! 希望!
老詩人は方眼紙の升目に自分の影を書き写すと
口笛を吹きながら消しゴムで消しはじめます
一枡影を消すとその一枡分詩人も消えて
やがて口笛だけになった老詩人は
自転車に乗りながら透明なさよならの詩をくちずさむ
坂のある港町の少女にキスをすると
一息の風になりました
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