わたしの場合毒虫ではなく/ただのみきや
わたしはことばをノートにこぼすようにペン先でそっと
白紙に触れた 車の中 わたしはひとり わたし以外の
空間を目には見えない蜘蛛や蟹がいつものようにびっし
り埋めつくしている ノートの上には風が吹いていた
風そのものは見えないが乱されたり?きむしられたりす
る叢や樹の様子を見ているとその時の風の強引さや表情
がはっきり見てとれることがある ノートの上にはも何
もなかったが──たとえばエーテルなんてものを想像し
た昔の人とか宇宙を頭に収まるものに近づけようと暗黒
物質なんていう仮説を立てた学者とか──白紙につくか
つかないかスレスレの辺り それでも白紙から見上げれ
ば成層圏に位
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