メモ/はるな
年をとることはそんなに恐ろしくない。死ぬこともたぶん今は。生きていくことそのものはとてもこわい。この線のどこがねじれているんだろう、なぞっていくと、なめらかな一本であるのに、と思いながら味噌を溶いている。人生はとてもとても長い。樹皮のように渇きながら、8歳のときも、21歳のときも、35歳のときもそう感じていた。
そう、みんな樹だったら、年老いていく詩人たちがかさかさといじわるになっていくのも道理よね。大樹が倒れる間際に、ざあっと皮がめくれていくのを見ましたか。すべらかな木目が眠っていることを知っています。ときたまそれが反対の人がいるよね、崩れるほど柔らかい皮ふの内側に、かたく刻まれた歴史があって、あるけど、見えない。それは種なので、いくつもの次へ繋がるんだと思います。
そうしてわたしは種じゃない。たんなる一枚の葉っぱです。陽を浴びたら息ができるけど、これ以上増えることができない。切り花の世界はもう夏が来ます。背の高いグラジオラス、清かなドウダンツツジの枝に、小粒の向日葵が並びます。人生はとてもとても長いので、何度も、花を買ってきます。
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