LAUGHING CHICKENS IN THE TAXI CAB。/田中宏輔
 
ネ『泥棒日記』朝吹三吉訳)

毎日のように葵書房という本屋に行く。すぐ近所なので、日に三回行くこともめずらしくない。この間、ジミーと行った。彼はオーストラリアから来た留学生で、大学院で日本文学を専攻している。二階の文芸書コーナーで、彼が新潮日本文学辞典を開いて見せた。コノ人、田中サンノ先生デショウ?そう言って、彼は指先をページの右上にすべらせた。そこには見出し語の最初の五文字が、平仮名で書いてあった。田中サンノ先生だから、おおおかまナノデスカ? それを聞いて、ぼくは絶句した。


ハンカチを
               (モーパッサン『テリエ館』2、青柳瑞穂訳)
浮べて、
   
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