結局、血が騒ぐ/ホロウ・シカエルボク
 
ど飲まないし、煙草にも手を付けない、酒を飲めば本が読めなくなるし、煙草を吸えば持ち物が汚れる、砂鉄を被ったみたいな奇妙なザラザラした感触で生活圏内が染め上げられる、それが気に入らない、父親も二人の弟もヘビースモーカーだった、父親は死んだし弟二人は引きこもりと鍵の掛かる病棟の中、かろうじて社会に残っているのは俺だけというわけだ、まあ、あまり人に話すようなことでもないけれど…そう、つまり、それが酒と煙草のせいじゃないとは俺には思えない、そういうことさ、実家に居る時にはずっと白檀の香を焚いていた、ニコチンの臭いなんか纏いたくないからね、今は猫が居るからそれもしていないけれど―ついこの間までは夜の詩ばかり
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