詩をめぐる診断/菊西 夕座
い回廊がむなしくがらんとしている
テラスの鉄柵には錆がはびこり、看板は崩れ、放置されたままの植木鉢には黒く渇いた土がねむる
閉じきったガラス窓のまぶたをこじあけて、街医者がペンライトをかざしても造園の反応はみられない
ところが皮肉なことに、どこからかとばされてきた植物の種子が回廊の一角に種をやどして芽生え
荒れほうだいの雑草を予感させる一塊の腫瘍をつくり、そこから鈴なりの白い花を咲かせ始めている
これこそが詩であると診断結果をくだすとき、白衣をきて歌っていたのはもぬけの殻の園だった
どんなときにも花は患者をみはなすことがなく、落ちても朽ちるまでゆく営為にこそ詩は矜持される
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