雨の日/由比良 倖
みを浮かべて、透子は自然な体勢で斜め上を見上げ、全身に雨を受けていた。
雨足は、もう大降りと言ってもいいくらいに強くなっていた。このままあと一日も雨が続けば、本当に地上は、遠くに見える海の彼方までも水没してしまうんじゃないか、と思えるくらいに。一年でも、二年でも降り続けばいい、高い、高い、高い、高いところから。一万メートルと言わず、無限の遠い高さから、一直線に、僕のもとへ、僕たちのもとへ、降り注げばいい。全てを水の底へ、時間の無い世界へ、昼も夜も無い世界へ、僕を、僕たちを誘ってくれればいい。
戻る 編 削 Point(2)