あの夜の何処かで/ホロウ・シカエルボク
船を受け入れてはいないけれど、当時はまだ何本かのフェリーが客を乗せては去って行った、その夜は一隻の特級フェリーが係留していた、客室とロビーのある階から眩しい照明が漏れていた、船の向こうには稼働し続けている小さな工業地帯があった、ベルトコンベアーや、おそらくは石炭か何かを選り分けているような音、そうだ、セメント工場もあった、そっちは夜は動いていなかった、その道をずっと行くと、堤防沿いの小さな街があって…今ではその街は無人になってしまった、健康センターを除けばゴーストタウンだ、そうだ、あの夜俺はどこにも存在していなかった、生身のゴーストの様なものだった、港の職員に声をかけられるまで、俺はそこからの景色
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