MELBA TOAST & TURTLE SOUP。 カリカリ・トーストと海亀のスープの物語。/田中宏輔
んだ父の肖像だった。
(原 民喜『夢の器』)
ここひと月ばかり、様々な俳人たちの句に目を通していったが、読むうちに、俳句の面白さに魅せられ、勉強という感じがしなくなっていった。とりわけ、村上鬼城、西東三鬼、三橋鷹女、渡辺白泉などの作品に大いに刺激された。鬼城の「何も彼も聞知つてゐる海鼠かな」という句ひとつにしても、それを知ることで、ぼくの感性はかなり変化したはずである。穏やかな海の底にいる、一匹の海鼠が、海の上を吹き荒れる嵐に耳を澄ましているというのだ。この静と動のコントラストは、実に凄まじい。
亡霊は生き返らない。
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