MELBA TOAST & TURTLE SOUP。 カリカリ・トーストと海亀のスープの物語。/田中宏輔
二年くらい前、ある詩人に、萩原朔太郎は好きですか、と尋ねられた。嫌な質問だった。というのも、この手の質問では、たいていの場合、好きか、嫌いか、といった二者択一的な返答が期待されており、それが、詩人の好悪の念と同じものであるか、ないかで、その後の会話がスムーズなものになったり、ならなかったりするからである。しかも、彼は用心深く警戒し、先に自分の好き嫌いは言わないのである。好きではないですけど、別に嫌いでもありません。ぼくの返事を聞くと、詩人は顔をしかめた。
しきりに電話が鳴っていた。
(コルターサル『石蹴り遊び』28、土岐恒二訳)
まだうとうととしながらも
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