レイヤー/さち
 

あいにくの雨だったけれど
学生の頃の仲間と当時の地元で集まるため
出かけた
何日も前から楽しみにしていた

  海のない土地に嫁いだので久しぶりに見る
  電車からの海沿いの景色は
  灰色の空と海が雨でひと続きになり
  車窓のガラスを不規則に流れ落ちる雨の筋が
  尚更に不鮮明な層を重ねる


ずっとずっと以前の大人になる前の私には
海が近い存在だった
それは青く輝くようなものではなく
くすんだ波が
コンクリートの堤防を洗い
古ぼけた漁船を揺らす
ただの日常の景色として そこにあった


電車が進んで行くほどに
心の何処かが不安定になっていく

べらり、べらり、と
女性週刊誌のページを後ろからめくるように
べらり、べらり、と 
1ページはかなり大きく
大人でなかった頃の強がりも
大人になったはずの退屈も
どんどん剥き出しにされるかも知れない

懐かしくもあり 思い出すのは怖くもある
核心に 迫るように
分かち合いたくもあり 気付かれるのが怖くもある
核心に 迫るように


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