聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
「ねえ紗々(僕は姉を名前で呼ぶ)ネガティブな話の流れだったらやめてよ」
と言った。姉は「私は説教は嫌いなのです」と言って、僕の水のボトルに手を伸ばしたので、僕は立ち上がって、クローゼットから新しい1リットルのエビアンを出して、「新しいのがちゃんとあるから」と言うと、紗々は、
「古いのがいい。1リットルも飲めない」
と言って、ベッドの上の飲みかけのペットボトルを取って、すぐにキャップを開けて飲んだ。
僕は足元側からベッドに上がり込んで、上半身を曲げて姉の顔を見上げた。姉は僕をよく通る道で会った見慣れた動物でも見るみたいに「この子、いつもここにいるけれど、意思疎通は図れるのかしら」と言った
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