聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
 
だ。それさえも否定することはとても、やっぱり怖いことだよ。
紗々、僕はいつでも紗々の背中を、頭を撫でてあげる。僕は紗々が読んだ本を全部読むよ。紗々、僕はひとりだよ。紗々も多分、ひとりなのかな。でも、僕は紗々といるとき、ひとりじゃないよ。僕は紗々をひとりにしたくないよ。傲慢で、お節介で、自己欺瞞かも知れなくても。でも、僕は紗々と話をしたい。ねえ、眠っている紗々。僕は、悲しいんだ。眠っている紗々、僕は、紗々との共通言語が欲しいんだ。僕は、紗々と話をしたいんだ。ねえ、今は眠っている紗々、いつかは僕を……』
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