聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
だ、彼女は二十四歳、事故死、自殺、病死、自殺、事故死、事故死、自殺、狂死、誰もが死んだという現実、彼や彼女が生きた現場、死んだ場所、誰も興味なんか持たない、少しずつ声は大きくなる、感動しましょう、素晴らしい世界、なんて大きな、偉大な、自然、芸術、努力すれば誰でも出来る、成功しましょう、幸せになろう、……
誰も聞かない、私も聞かない、大声で本当のことは言えないって、みんな知ってるから、本当のことは、大声で言おうとしても声にならないのが本当だと私は思うから、だからね、私たちは忘れていく、でも本当は覚えている、泣きたくなるような、たったひとつのこと、たったひとつの全て、それでも言葉に出来ないこと」
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)