聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
乱暴に言えば、例えば自分自身の時の流れについては、決してひとに伝えることが出来ない。流れると言うのは、私の、心に対して流れるのよ。身体に対して、じゃない。身体を感じるのも、また心だから。……屁理屈だと思わないでね。そしてまた、私の心そのものが、流れていくの。
生きた人間を生きたまま解剖することは出来ない。本当に生きているものは原理的には、言葉にも絵にも出来ない。詩や芸術は、人間にとってのとても大切な覚え書きみたいなもので、それ以上のものではない。でも、それ以上のものではないという、そのことが、どんなに素晴らしいことか、私たちは、どんなに少しのものから、どんなに大きなものを見ることが出来るか
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