海の体温/みぎめ ひだりめ
 
僕らは 海から生まれたのに
どうして 鱗がないんだろう

ああ そうか 寂しかったのだ
こころを 抱きしめたいのだ
願わくば どうか
あなたにも 抱きしめて欲しいのだ

じっとりとぬるい あなたと夜闇
ほのかな シトラスの ゆりかご
しんと 静まり返った ぼくらの海
魂が 触れ合っているから
寂しくないのだ きっと

聞こえるはずのない 黒い波音が
ざざあ ざざあ と
鼓膜に 流れていく
泳いだ 波のすえ
いつか ふたりで 
街を抜けて 雨になろう

寄せては返して 心臓が
ゆっくりと あるべき場所へ帰る
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