空に還る雨/まーつん
 


目ざめの雨音が
昨日の悲しみを洗い流す

クズと呼ぶ声、狂った手もと
外した目論見、無残な成果

傘を置いたまま外に出て
頭から水に打たれると
体温と記憶とが
皮膚から剥がれ落ちていく

垂直な川となって
忘却の海へと下っていく
古き懊悩の流れ

街をふらふら、彷徨い歩いて
向けられる奇異の目を避け
明日へとよじ昇る手がかりを
見つけようと視線を走らせるが

家々の門戸は閉ざされ
行きかう人からは顔が溶け落ち
私の足元を流れる落ち葉だけが
この往行の道連れだった

地を這う雨の水音は
歩みと共に高まっていき
靄のベールを潜り抜けた先に
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