午後のリダイアル/大町綾音
 
「さかなとられた」

こどものころ
父とさかなとりに

さかなつりじゃなくて
さかなとり

ちいさなつりざおに
ぱんをこねてつけたら

父だけがさかながとれて
あたしは枯れくさをつった

ばかあ
さかなとりじゃないよ

あなたをにんげんをとる
漁師にしてあげよう

なんてことを 言った
えらい人なんかもいるけど

あたしはその晩
家のおおきなかめを水でみたして

さかな入れておいたら
夜のあいだに猫にさかなとられた

おしまい



「兄が」

兄が

 お疲れ様、
 大変だろうけれど、
 がんばって!
 」
と、
昔ならくれなかった手紙をくれて、
がんばってくれた午後。

優しい時間だね?



「でんわ」

でんわ
 りんりん

でんわ
 りんりん

でんわ
 でんわ

父に叔母がでんわ
“お父さんぜんぜん出ないねえ“って

叔母もあきれてた

足がいたいんだって

叔母もなっとくしてた

おしまい。
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