『機動戦士ガンダムAGE』における許しと老いを一つの祈りとして読み解く。/大町綾音
 
彼の人格を形作っていく。
 その後の人生を通じて彼は軍人、国家指導者、設計者として歴史の中枢を歩んでいくのだが、その行動原理の多くは「敵を赦さないこと」「己れを変えないこと」、つまり正義を憎しみによって支え、貫くことであった。

 しかし、物語の最終盤、すでに老境にさしかかったフリットは、かつての敵──ヴェイガンを赦すという究極的な選択をする。
 その決断は劇的でありながらも、一見あっさりと描かれている。……注目すべきは、赦すと決めたその後の彼が、驚くほど“ためらわず”にそれを実行してしまうという点である。
 感情の揺れや逡巡が描かれることはなく、ただ静かに、しかし確実に彼は過去のすべて
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