city life/大町綾音
ているわ……
冬の空は晴れているわ……
でも、春の空はくもっている……
どうしても、
聞いてみたかったことだわ?
どうしても、
伝えたかったことだわ?
花壇とそらがそれからどうなったか……。
「通学路のそばの桜」
とある通学路のそばに、
桜の木があったの。
その桜の木のベンチの上で、
おばあさんが亡くなった。
心臓発作だったよ?
買い物の帰りでね。
重い買い物袋を下げていたんだ。
一人で暮らしているおばあさんだった。
春香る五月のことだった。
葉桜の下の出来事だった。
桜は七分咲きか九分咲きの、
花見頃がいちばん良いって言うけれど、
僕は葉桜の季節の、
真剣な若葉の桜が好きだ。
若葉の桜はそっと背負っている。
おばあさんの死をきっと背負っている。
だから秋にはきっと美しく紅葉して、
そっと悲しい泪を流すんだと思う。
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