惹句で満たして 1章/浅い殴打
 
のせて戦慄(おのの)く。

思い返せば、勤務初日に

「冷たい指ね」
「教えてあげるから……」
そう言ってわたしの左手へ
周到に熱を重ねて来た。

休憩中に 二人きりで入った化粧室。

「これ、あなたに教えてあげたいの」

と白いブラウスから、
背中の刺青をあらわにした。
わたしの左手を
青い薔薇が二輪咲く彼女の
腰へ這わせた。

骨ばっていて
非常に
ドキリとした。

掴まれた手首も、頸筋も、頬も
みんな熱くて怠い。

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「これ以上は、いけません」

熱も嘘もいけません。

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