風船/栗栖真理亜
 
風船は大きく膨らんでいた
それはまるで心臓から送り込まれる赤い血漿のよう
どくどくと脈打つ命

風船はいつの間にか萎んでいた
まるで全てを諦めたようなひしゃげた姿になって佇んでいた
石の飛礫から身を守り風船は物陰に潜む
皺くちゃの泣き出しそうな顔で体を頼りなくくの字に曲げて

硬い石に体を破かれ穴だらけとなった赤い風船
情けない姿になりながらも少しずつ外気を取り入れ
風船はまた体を大きく膨らませてゆく


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